DX推進スキル標準とは何か?その内容と活用方法をわかりやすく解説
DX推進スキル標準とは、DXを推進する人材の役割や習得すべき知識・スキルを示した指針です。経済産業省とIPAが令和4年12月に策定し、令和5年8月に改訂しました。
この記事では、DX推進スキル標準の内容や目的、活用方法などについて解説します。
DX推進スキル標準の目的と背景
DX推進スキル標準の目的は、日本企業がDXを推進するために必要な人材を育成・採用するための基準や指標を提供することです。DXとは、デジタル技術やデータを活用して、ビジネスや社会の課題を解決し、価値を創出することです。
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DXは、社会環境やビジネス環境の変化に対応するために、企業や組織にとって必須の取り組みです。しかし、多くの日本企業は、DXの取り組みに遅れをとっていると考えられます。その大きな要因のひとつとして、DXの素養や専門性を持った人材が不足していることが挙げられます。
そのような状況を踏まえて、「デジタル田園都市国家構想基本方針(令和4年6月7日閣議決定)」において、「令和4年内にDX推進人材向けのデジタルスキル標準を整備する」と示されました。これを受けて、経済産業省とIPAは、令和4年6月にDX推進人材向けのデジタルスキル標準を検討する有識者WGを設置し、専門家による検討・議論を重ねて策定しました。
DX推進スキル標準の内容
DX推進スキル標準は、「デジタルスキル標準」という名称で公表されており、以下の2種類で構成されています。
- DXリテラシー標準(DSS-L):全てのビジネスパーソンが身につけるべき能力・スキルの標準
- DX推進スキル標準(DSS-P):DXを推進する人材の役割や習得すべきスキルの標準
DXリテラシー標準(DSS-L)
DXリテラシー標準は、組織・年代・職種を問わず、働き手一人ひとりが自身の責任で学び続けることが重要であるという前提のもと、DXに参画し、その成果を仕事や生活で役立てるうえで必要となるマインド・スタンスや知識・スキルを示す学びの指針です。
DXリテラシー標準は、「マインド・スタンス」「データ活用」「デジタル技術」「サイバーセキュリティ」「法・倫理・社会」の5つの領域に分けられており、それぞれに具体的な内容が定義されています。以下に、各領域の概要を示します。
- マインド・スタンス:
DXに対する意欲や姿勢、自己成長やチームワークの重要性などを理解し、実践する能力 - データ活用:
データの収集・分析・活用の基礎知識や方法論、データガバナンスやデータ品質の重要性などを理解し、実践する能力 - デジタル技術:
DXに関連する主要なデジタル技術(AI、IoT、クラウド、ブロックチェーンなど)の基本的な仕組みや技術動向、利用方法や効果・課題などを理解し、実践する能力 - サイバーセキュリティ:
サイバーセキュリティの基本的な概念や脅威、対策方法や法令・規制などを理解し、実践する能力 - 法・倫理・社会:
DXに伴う法的・倫理的・社会的な課題や影響について理解し、適切に対処する能力
DX推進スキル標準(DSS-P)
DX推進スキル標準は、企業や組織のDXの推進において必要な人材のうち、主な人材を5つの「人材類型」に区分して定義しています。以下に、各人材類型の概要を示します。
- ビジネスアーキテクト:
DXの取り組み(新規事業開発/既存事業の高度化/社内業務の高度化、効率化)において、目的設定から導入、導入後の効果検証までを、関係者をコーディネートしながら一気通貫して推進する人材 - デザイナー:
ビジネスの視点、顧客・ユーザーの視点等を総合的にとらえ、製品・サービスの方針や開発のプロセスを策定し、それらに沿った製品・サービスのありかたのデザインを担う人材 - データサイエンティスト:
DXの推進において、データを活用した業務変革や新規ビジネスの実現に向けて、データを収集・解析する仕組みの設計・実装・運用を担う人材 - ソフトウェアエンジニア:
DXの推進において、デジタル技術を活用した製品・サービスを提供するためのシステムやソフトウェアの設計・実装・運用を担う人材 - サイバーセキュリティ:
業務プロセスを支えるデジタル環境におけるサイバーセキュリティリスクの影響を抑制する対策を担う人材
各人材類型は、それぞれが独立して存在するのではなく、相互に連携・協働しながらDXの推進に貢献することが期待されています。そのため、DX推進スキル標準では、各人材類型に対して、以下の3つの観点からスキルを定義しています。
- 専門性:各人材類型が担う役割に必要な知識やスキル
- リーダーシップ:DXの推進において、自ら主体的に行動し、他者を巻き込んで目標達成に向けて導く能力
- コラボレーション:DXの推進において、他の人材類型や関係者と協力し、相互に価値を創出する能力
各人材類型に対するスキルの詳細は、DX推進スキル標準(DSS-P)の資料を参照してください。
DX推進スキル標準の活用方法
DX推進スキル標準は、企業や組織がDXを推進するために必要な人材を育成・採用するための基準や指標として活用できます。具体的には、以下のような活用方法が考えられます 。
- DXリテラシー標準(DSS-L)は、全てのビジネスパーソンがDXに参画し、その成果を仕事や生活で役立てるために必要なマインド・スタンスや知識・スキルを示す学びの指針として活用できます。例えば、自己学習や社内教育のカリキュラム作成、社員の評価やキャリア開発などに利用できます。
- DX推進スキル標準(DSS-P)は、DXを推進する人材の役割や習得すべきスキルを示す人材育成・採用の指針として活用できます。例えば、DX推進人材の定義や配置計画、採用基準や教育プログラムなどに利用できます。
また、DX推進スキル標準は、企業や組織だけでなく、教育機関や人材育成サービス提供者なども活用できます 。
例えば、教育機関は、DX推進スキル標準を参考にして教育内容やカリキュラムを見直したり、学生の就職支援や企業との連携を強化したりできます。人材育成サービス提供者は、DX推進スキル標準を参考にして教育コンテンツやサービスメニューを開発したり、企業とのマッチングや提案を行ったりできます。
まとめ
この記事では、DX推進スキル標準の内容や目的、活用方法などについて解説しました。
DX推進スキル標準は、日本企業がDXを推進するために必要な人材を育成・採用するための基準や指標を提供するもので、企業や組織だけでなく、教育機関や人材育成サービス提供者なども活用できます。
DXは、社会環境やビジネス環境の変化に対応するために、企業や組織にとって必須の取り組みです。DX推進スキル標準を活用して、DXに参画し、その成果を仕事や生活で役立てることができる人材を育てましょう。
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