データサイエンスと宇宙産業の相乗効果を知る!そのメリットと必要な技術
データサイエンスとは、大量かつ多様なデータから有用な知見や洞察を引き出すための学問分野です。
データサイエンスは、統計学、数学、情報科学、機械学習、人工知能などの手法を用いて、データの収集、整理、分析、可視化、モデリング、予測などを行います。
データサイエンスは、実験や理論に続く第4の科学とも呼ばれており、帰納的なアプローチで新たな発見や解決策を探求します。
この記事では、宇宙産業におけるデータサイエンスの活用事例を詳しく解説していきます!
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宇宙産業におけるデータサイエンスの動向
宇宙産業とは、人工衛星やロケットなどの宇宙機器の開発・製造・打ち上げ・運用・廃棄などを行う産業です。国家間の競争や協力の場としてだけでなく、民間企業や個人の参入が増えることで新たなビジネスチャンスが広がる産業でもあります。
宇宙産業は、衛星通信や衛星放送などの既存の市場だけでなく、地球観測や位置情報サービスなどの新興市場も拡大しており、2030年代には約2兆円規模に成長すると予測されています。
そのような宇宙産業において、データサイエンスは重要な役割を果たしています。
例えば、人工衛星から得られる大量かつ多様なデータ(衛星データ)を活用することで、気候変動や自然災害の観測・予測・対策、農業や漁業の生産性向上、インフラや資源の管理・保全・開発などが可能になります。
また、ロケットや宇宙機器の開発・製造・運用においても、データサイエンスは設計や試験の効率化や精度向上、性能や信頼性の最適化、故障や事故の予防や対応などに使用されます。
宇宙産業におけるデータサイエンスの活用事例
それでは具体的にどのような場面でデータサイエンスが利用されているのでしょうか?
宇宙産業におけるデータサイエンスの活用事例を以下でいくつか紹介します。
衛星データプラットフォーム「Tellus(テルース)」
経済産業省が開発したクラウド環境上の衛星データプラットフォームで、政府の様々な衛星データをオープン&フリーで提供する機能、商用衛星データやデータ処理アルゴリズムやアプリケーションの売買が可能なマーケット機能、アプリケーションの開発環境、教育コンテンツ、メディア機能などを備えています。
このプラットフォームを通じて、衛星データを利用した新たなビジネスやソリューションの創出が促進されています。
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次元削減とスパース推定によるクラスタ化ジェットの解析
新型基幹ロケットH3の開発において、打ち上げ時のジェットから生じる音響波を予測・低減するために、サブスケール試験や数値シミュレーションを用いた解析が行われています。
その際に、非常に大規模なシミュレーション結果を特徴的な周波数成分(モード)に分解するDynamic Mode Decomposition(DMD)という次元削減手法と、必要でないモードを除去するスパース推定手法を組み合わせて適用しました。
その結果、ジェットから生じる特徴的な現象や構造を可視化することができました。
深層学習による衛星(航空)画像の変化検知
人工衛星や無人航空機から得られる画像を用いて、地表面の変化を検知することは、災害対策や都市計画などに有用です。
しかし、画像間の位置合わせや光学的な差異などによって変化検知が困難になる場合があります。
そこで、深層学習を用いて画像間の差分を自動的に抽出する手法を開発しました。この手法は、画像間の位置合わせや光学的な差異を考慮しなくても、変化箇所を高精度に検出できます。
深層学習について解説した記事はこちら
深層強化学習による流体制御
流体制御とは、流体現象(気体や液体の流れ)を意図的に操作することであり、航空機や自動車などの抗力低減やエネルギー効率向上などに応用されます。
流体制御においても、データサイエンスは有効な手段となります。
例えば、深層強化学習を用いて流体制御の最適な方策を自動的に学習する手法が提案されています。
この手法は、流体制御の目的(抗力低減や揚力増加など)を報酬として定義し、流体制御の手段(吹き出し口や吸い込み口など)を行動として定義し、流体現象の状態(圧力や速度など)を観測として定義します。
そして、深層ニューラルネットワークを用いて、観測から行動への写像を近似する方策関数を学習します。
この手法は、数値シミュレーションや実験において、従来の手法よりも高い性能を示しました。
CNNやRNNなど深層学習の応用例についてわかりやすく解説した記事はこちら
データサイエンス×宇宙産業の今後
データサイエンスと宇宙産業は、相互に影響しあう関係にあります。
データサイエンスは、宇宙産業における技術やサービスの革新や価値創出に貢献します。一方で、宇宙産業は、データサイエンスにおける課題やニーズを提供し、データサイエンスの発展に刺激を与えます。
データサイエンスと宇宙産業の融合は、今後もさらに進んでいくと考えられます。
データサイエンス×宇宙産業の今後の展望として、以下のようなものが考えられます。
宇宙探査や天文学におけるデータサイエンスの活用
太陽系や銀河系などの宇宙空間や天体を探査するためには、人工衛星や探査機などから得られる大量かつ複雑なデータを効果的に分析する必要があります。
データサイエンスは、宇宙探査や天文学において、新たな発見や理解を促進する役割を果たすことになるでしょう。
例えば、NASAの火星探査車パーサヴィアランスは、機械学習やコンピュータビジョンなどの技術を用いて、火星表面の地形や岩石などを自動的に認識・分類・分析し、生命存在の可能性や水資源の有無などを探索します。
また、欧州南天天文台(ESO)は、巨大望遠鏡VLTやELTなどから得られる画像データを深層学習で処理することで、惑星や恒星などの特徴や性質を高精度に推定します。
宇宙ビッグデータのオープン化と共有
宇宙産業から得られるデータは、多くの場合非公開であり、限られた人々しかアクセスできません。しかし、宇宙ビッグデータは社会全体にとって有益であり、オープン化と共有が望まれます。
オープン化と共有によって、宇宙ビッグデータの活用範囲や価値が拡大し、新たなアイデアやソリューションが生まれます。
例えば、JAXAは、自身が保有する衛星データや宇宙科学データなどをオープンデータとして公開し、一般の人々や企業などが利用できるようにしています。
また、SpaceXは、自身が打ち上げるスターリンク衛星の軌道データをオープンソースで公開し、他の衛星との衝突回避や宇宙ゴミの削減に貢献しています。
宇宙産業における人工知能の自律化と協調化
宇宙産業においては、人間の介入が困難な場合が多くあります。
そのため、人工知能を搭載した宇宙機器やシステムが自律的に判断や行動を行うことが求められます。また、複数の人工知能が協調的に動作することも重要です。
例えば、JAXAは、人工知能を搭載した小型衛星やロボットなどを用いて、月面探査や資源採取などを行うプロジェクトを進めています。
このプロジェクトでは、人工知能同士が通信や協力を行いながら、自律的に任務を遂行します。
まとめ
以上のように、データサイエンスと宇宙産業は、相互に影響しあう関係にあります。
データサイエンスは宇宙産業における技術やサービスの革新や価値創出に貢献する一方、宇宙産業はデータサイエンスにおける課題やニーズを提供し、データサイエンスの発展に刺激を与えます。
データサイエンス×宇宙産業の今後は、さらに進化していくと考えられます。
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