深層学習が可能にする異常検知の技術と分野

深層学習が可能にする異常検知の技術と分野

深層学習による異常検知とは、データに含まれる異常なパターンや外れ値を検出する技術です。異常検知は、故障診断、不正検知、画像処理、自然言語処理など、さまざまな分野で応用されています。この記事では、深層学習による異常検知の基本的な原理と手法、および実践的な事例を紹介します。

深層学習による異常検知の原理

深層学習による異常検知の原理は、正常なデータの特徴を学習するモデルを構築し、そのモデルと入力データとの間に生じる誤差や距離を測定することで、異常なデータを判別するというものです。深層学習のモデルは、ニューラルネットワークやオートエンコーダなど、多層の非線形変換を用いて高次元のデータを低次元の特徴空間に圧縮することができます。この特徴空間では、正常なデータは密に集まり、異常なデータは離れた位置に分布するという仮定が成り立ちます。したがって、入力データを特徴空間に写像し、その位置や再構成誤差を基準にして、異常度スコアを計算することができます。

深層学習による異常検知の手法

深層学習による異常検知の手法は、大きく分けて以下の3つのカテゴリに分類されます。

教師あり学習

正常なデータと異常なデータのラベルが付与されたデータセットを用いて、二値分類器を学習する方法です。例えば、異常な画像を検出する場合は、正常画像と異常画像のラベルが付いた画像セットを用意し、それらを入力としてニューラルネットワークを訓練します。ニューラルネットワークは、入力画像が正常か異常かを判断する出力層を持ちます。教師あり学習は、高い精度で異常検知ができる利点がありますが、ラベル付けされたデータセットが必要であるという欠点もあります。

教師なし学習

正常なデータだけで構成されたデータセットを用いて、正常なデータの特徴を学習する方法です。例えば、オートエンコーダは、入力データをエンコーダと呼ばれる部分で特徴空間に圧縮し、その特徴から元の入力データを再現するデコーダと呼ばれる部分で再構成します。オートエンコーダは、正常なデータだけで訓練されるため、正常なデータに対しては低い再構成誤差を示しますが、異常なデータに対しては高い再構成誤差を示します。したがって、再構成誤差を異常度スコアとして用いることができます。教師なし学習は、ラベル付けされたデータセットが不要であるという利点がありますが、正常なデータの定義や範囲が明確でない場合は、異常検知の性能が低下する可能性があります。

半教師あり学習

正常なデータだけで構成されたデータセットと、正常なデータと異常なデータのラベルが付与された一部のデータセットを用いて、正常なデータの特徴を学習する方法です。例えば、敵対的生成ネットワーク(GAN)は、正常なデータを生成する生成器と呼ばれる部分と、入力データが正常か異常かを判別する判別器と呼ばれる部分から構成されます。GANは、正常なデータだけで構成されたデータセットで生成器と判別器を同時に訓練し、その後に一部のラベル付けされたデータセットで判別器のみを追加で訓練します。判別器は、入力データに対して正常か異常かを判断する出力層のほかに、特徴空間に写像する中間層も持ちます。この中間層の出力を異常度スコアとして用いることができます。半教師あり学習は、教師あり学習と教師なし学習の両方の利点を兼ね備えており、少量のラベル付けされたデータセットで高い精度で異常検知ができる可能性があります。

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深層学習による異常検知の事例

深層学習による異常検知は、さまざまな分野で実践的に応用されています。ここでは、その中からいくつかの事例を紹介します。

故障診断

深層学習による異常検知は、機械や装置の故障や劣化を早期に発見するために用いられます。例えば、では、オートエンコーダを用いて風力発電機の振動信号から故障を検出する方法が提案されています。オートエンコーダは、正常な振動信号だけで訓練され、その再構成誤差を異常度スコアとして用いています。実験では、オートエンコーダは他の手法よりも高い精度で故障を検出できることが示されています。

不正検知

GANは、正常な取引だけで構成されたデータセットで生成器と判別器を同時に訓練し、その後に一部のラベル付けされたデータセットで判別器のみを追加で訓練します。判別器は、入力データに対して正常か不正かを判断する出力層のほかに、特徴空間に写像する中間層も持ちます。この中間層の出力を異常度スコアとして用いることができます。実験では、GANは他の手法よりも高い精度で不正取引を検出できることが示されています。

画像処理

深層学習による異常検知は、画像に含まれる異常な領域や物体を検出するために用いられます。例えば、では、オートエンコーダを用いて医療画像から病変部位を検出する方法が提案されています。オートエンコーダは、正常な医療画像だけで訓練され、その再構成誤差を異常度スコアとして用いています。実験では、オートエンコーダは他の手法よりも高い感度と特異度で病変部位を検出できることが示されています。

自然言語処理

深層学習による異常検知は、テキストに含まれる異常な単語や文を検出するために用いられます。例えば、では、オートエンコーダを用いてニュース記事から偽ニュースを検出する方法が提案されています。オートエンコーダは、正常なニュース記事だけで訓練され、その再構成誤差を異常度スコアとして用いています。実験では、オートエンコーダは他の手法よりも高い精度で偽ニュースを検出できることが示されています。

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まとめ

以上が、深層学習による異常検知の基本的な原理と手法、および実践的な事例の紹介です。深層学習による異常検知は、多くの分野で有用な技術ですが、同時にさまざまな課題も抱えています。例えば、深層学習のモデルはブラックボックスであるため、異常検知の理由や根拠を説明することが難しい場合があります。また、深層学習のモデルは大量の計算資源や時間を必要とするため、リアルタイムやオンラインでの異常検知に適用することが困難な場合があります。これらの課題に対して、今後もさらなる研究や開発が進められることが期待されます。

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